当日の様子

2018年10月24日(水)茅ヶ崎市民文化会館にて、面白法人カヤック代表取締CEOの柳澤大輔氏を講師に迎え、『新しいワークライフスタイルを実現する 茅ヶ崎資本主義へ』と題した講演を含む「第8回ローカルファーストシンポジウム」を開催しました。

 

 柳澤さんは21年前の1998年に学生時代の友人と一緒に「面白法人カヤック」を設立し、ウェブサイトやソーシャルゲームなどのコンテンツ制作、コミュニティ運営などを核に幅広いサービスを提供する事業を展開されている方です。

現在はその事業スキルを応用して、地域から始まる新たな資本主義の形を模索し、本社を構える鎌倉市をモデルにまちづくりの様々な取り組みを「鎌倉資本主義」として発信しています。

 

 

講演の内容を一部ご紹介

楽しく生きる人を増やしたい

 従来の資本主義市場における企業の使命は端的に言えば成長することでしたが、これからは「よりよい社会」を目指す意識が大切です。

 これまでの様々な課題を解決し豊かに暮らす環境にするには個人も企業も人任せではなく主体的であることが求められますが、それを導き出すにはどうするか。
そこに面白さ、楽しさがあることが重要だと柳澤さんは言います。

 

 

 講演の冒頭では面白法人カヤックがこれまでに立ち上げた事業の紹介があり、その発想着想の意外性やユニークさが会場を沸かせました。
 また事業だけでなく組織の在り方にも独自性を打ち出していて、特に若い世代が聞けば憧れるような自由な社風です。

 

 全ての事業の出発点とするブレストは会議形式の一つですが「仲間のアイデアに乗っかる」「とにかくたくさんの数を出す」「(アイデアの)質は問わない」というシンプルなルールだけを徹底して行うと、結果として柔軟で意外性のある企画が多数上がり、さらにブレストに参加し意見を出す過程を経て「自分事化=主体化」されるメリットに繋がるそうです。

 

 

 柳澤さんはそのスタイルで、今、鎌倉を盛り上げる活動を行っています。

 地元企業の社食を共有化するプロジェクト「まちの社員食堂」や「まちの保育園」「まちの人事部」など興味を引く企画を展開していますが、基本はビジネスとして成立すること、地域で経済がきちんと回る事業になること。柳澤さんの「新たな指標」づくりの挑戦は勢いを増して続いていますが、伺ったお話には、茅ヶ崎のまちづくりに置き換えた時にもヒントとなる発想を多く得られた講演でした。

 

パネルディスカッション

一部ご紹介

講演に続いて、後半のパネルディスカッションでは、茅ヶ崎でウェブサイト制作会社を経営する三木五月さん(株式会社ニュートラルワークス)、そして地元茅ヶ崎の出身で映画監督として活動する山本康士さん、全国のまちづくり事業の専門家、関幸子さん(ローカルファースト研究所代表取締役)の3名にも参加いただきこれからのまちづくりへの想いを語っていただきました。

 

― まちが魅力的かつ持続的に発展するために何をしたらいいのか。また茅ヶ崎の魅力などをお聞かせください。
三木 茅ヶ崎の課題の一つは「働く場所が少ない」こと。その意味でも自社を成長させ地元の雇用を増やし東京と同水準の給料が支払えるようにしたいです。
茅ヶ崎はいい意味で「人が緩くていい感じで話ができる」まちですが、ポテンシャルは高い。今後茅ヶ崎に人を呼び込むにはWEBメディアの活用も大事なので自分たちがその役割を担いたいと思います。

 

今、茅ヶ崎から連想するものを聞くと大抵がサザン!と答えますが50年後もそのままでいいのか、またこれから「茅ヶ崎と言ったらこれ」という新しい「物・こと」を生み出してブランディングしたいですね。茅ヶ崎のコンセプトムービーを山本監督と一緒に作って、WEBで展開…なんて流れからどうでしょうか。

 

山本 僕は三木さんの言う「ゆるい人間」の代表ですが(笑)その緩くてのんびりした風潮の中で育ったからこそ映画にじっくりのめり込めたと感じることがあります。

自分の好きな映画というコンテンツで茅ヶ崎が活性化する取り組みをしたいと思います。茅ヶ崎は海もありサーフカルチャーも盛んですが、芸術文化の面で行くとやや弱い。より文化的な側面を魅力にまちが発展していくことを期待します。

映画作りの観点では東京は間違いなく便利なんですが、それでも自分は茅ヶ崎に残りたい。むしろ東京の人が茅ヶ崎に引っ越してきたくなるようなそういう場所にしたいんです。そのためには「文化」は非常に大切。そういう立場で自分は頑張ろうかなぁと。

 

 茅ヶ崎の人は基本的に茅ヶ崎が大好きですよね。それってまちの強さなんです。

そして「茅ヶ崎の特長は緩さだ」というお話がありましたが、すなわち「多様性を受け入れてくれるまち」と言う表現にも置き換えられると思います。

ローカルファーストのいい所は「地元密着」ですが、近すぎるとよそ者を受け入れない現象が起こることも多々。でも茅ヶ崎はどこか開放的でその距離感が絶妙。

誰が来ても一緒に楽しんでいっていいよと招き入れてくれる寛容さがあります。

カヤックさんがおっしゃっていた暮らしに対する、「楽しむ、面白がる」という発想と価値観は、そんな茅ヶ崎にはとてもマッチするもので、ローカルファーストの今後が楽しみです。

 

柳澤 自分の場合は企業寄りの取り組みが中心です。GDPに替わる指標はなにかを探し求め、現在地域通貨という発想を得て取り組んでいます。

一方ローカルファーストは市民活動や地域活性という視点がより高いのかなと思います。いずれにしても足元に経済資本をしっかりと根付かせるという点でとても似ています。

広い意味でのローカルファーストの中に地域資本主義というものが含まれると思うので、カマコンでやってきたような事例も参考に、或いはまったく新しい視点の取り組みを生みつつ連携しながらやっていけたら面白いことになるのでは、そんな期待があります。

 

 

講師プロフィール

面白法人カヤック 代表取締役CEO

柳澤 大輔

❚ profile

1974年香港生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、ソニー・ミュージックエンタテインメントに入社。1998年、学生時代の友人と共に面白法人カヤックを設立。ウェブサイト、ソーシャルゲーム等のコンテンツ制作やコミュニティ運営などを核に、幅広いサービスを提供している。そのかたわら、地域から始まる新たな資本主義の形を模索し、本社を構える鎌倉にちなみ「鎌倉資本主義(地域資本主義)」として発信。また、地域の課題を自分ごと化する鎌倉活性化プロジェクト「カマコン」に発足から携わり、一度は中止が決まった鎌倉花火大会を有志たちによるクラウドファンディングによって復活させるなど、企業や業界の枠を越え地域を盛り上げる活動に積極的に取り組んでいる。